エネうる通信【コラム】

2022年8月29日

太陽光発電のメンテナンスは欠かせない!必要な費用の目安

太陽光発電は太陽の光をエネルギー資源とする、環境に優しい発電方法です。
住宅やビルの屋根・屋上・壁など、未使用スペースを活用できるため導入しやすいものの、日射量や太陽光パネルの状態が発電量を左右します。

長い期間、安全・安定的な発電量を維持するためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。

そこで本記事では、太陽光発電のメンテナンス内容やコスト、よくある疑問を取り上げて解説します。
太陽光発電の導入に興味のある方、太陽光発電を運用していてメンテナンスについて気になる方は、ぜひ参考にしてください。

太陽光発電のメンテナンスは欠かせない!必要な費用の目安

太陽光発電のメンテナンスが必要な理由

太陽光発電は他の発電方法のように、可動部分がないため部品の消耗や故障が少なく、メンテナンスフリーで使用できると一部誤解されています。
しかし、太陽光発電は、設置すれば維持費用なく継続的に使えるものではありません。

太陽光パネルの寿命は20〜30年と言われていますが、経年劣化により発電効率は徐々に低下してしまいます。

また、環境の変化や自然災害により、太陽光パネルや充電設備が早く劣化したり、動植物の影響を受けて不具合を起こしたりする可能性も考えられます。最悪の場合、発熱や漏電による出火・火災事故が起こるリスクもあります。

2017年4月から施行された改正FIT法では、FIT制度(固定価格買取制度)適用の太陽光発電設備と、50kW以上の発電設備のメンテナンスが義務化されました。義務化されているメンテナンスを怠ると、認定が取り消される可能性もあります。

また、義務化されていない場合でも、売電利益を損なうことなく、故障や事故などのトラブルを防ぐためには、定期的なメンテナンスを怠らずに続けていくことが肝心です。

以下で、太陽光発電のメンテナンスが必要な理由を、さらに詳しく見ていきましょう。

発電効率低下

太陽光発電は投資目的でも導入が進んでいます。
一般住宅においても、発電した電気のうち自家消費で余った電気を電力会社に売り、収入を得られます。売電収入は発電量に左右されるため、発電量が減少すれば投資収益の減少に繋がりかねません

太陽光発電は太陽光パネルに光が当たることで、パネル内部の半導体から電子が飛び出し、電気が流れるという仕組みです。パネル表面が埃や鳥のフンなどで汚れていると、光がパネル内部に伝わりづらく、発電効率が落ちてしまいます。パネル表面の汚れを放置すると、年間で1〜2%ほど発電効率が下がるという報告もあります。

現在、雨水と一緒に汚れを排水しやすい設計であったり、防汚加工がなされていたりする太陽光パネルも増えています。しかし、落ちにくい汚れが付着している可能性もあるため、定期的に確認しつつ、必要に応じて専門業者に清掃を頼むのがおすすめです。

また、「PID現象(Potential Induced Degradation)」による出力低下も問題視されています。PID現象とは太陽光パネルの劣化により、フレームとパネル内部の回路間の電位差が大きくなり、電流漏れを起こし、深刻な劣化や発電効率の低下をもたらすというものです。高温多湿な環境下における、高い電圧のかかる大規模システムで発生しやすいと言われます。

現在ではPID現象対策を施した製品が増えていますが、こまめなメンテナンスで異常を早期発見し対応することが重要です。

セカンダリー取引

近年、既に稼働している太陽光発電所を中古で売買する、セカンダリー取引市場が注目されています。FIT制度の買取価格の低下や全量売買の条件変更などにより、過去に事業認定を受けた中古の太陽光発電所への投資需要が高まっています。

また、地球温暖化問題やSDGsへの意識の高まりにより、再生可能エネルギーを確保したい事業会社が増加していることも、セカンダリー取引が拡大する背景の一つです。

太陽光発電所のセカンダリー取引では、設備の状態や価値を調査し、収益性やリスクを評価・判断します。このデューデリジェンスと呼ばれる活動は、太陽光発電所の価値や品質を担保し、セカンダリー取引において実績を証明する鑑定書のような役割を担います。

JPEA(太陽光発電協会)が中心となり発表した「太陽光発電事業の評価ガイド」には、発電設備の安全性や信頼性、土地の権利や収益性、地域との共生など多様な評価項目が含まれています。

発電設備の安全性を評価する上では、保守修繕にも言及されており、点検結果や稼働データなどの情報が重要です。太陽光発電設備を資産と捉える場合、適切なメンテナンスを行い、価値を維持することが欠かせません。

安全性確保

太陽光発電は一般住宅での設置も可能で、比較的身近な存在であるものの、電気や熱を扱うため、常に細心の注意が必要です。適切なメンテナンスを怠ってしまうと、火災や事故を引き起こす恐れもあります。

例えば、パネル表面に付着した頑固な汚れを放置しておくと、汚れによってできた影の部分が発熱し、セルの焼損に繋がる「ホットスポット」と呼ばれるトラブルが発生しやすいです。また、雑草がパネルを覆ってしまうと、発電量の低下に加え獣害を誘引するなど、収益性を損なう原因に発展するかもしれません。

さらに、設備の施工不良による被害も報告されています。
太陽光パネルとボルトがしっかり固定されていなかったり、配線が誤っていたり、防水対策や土砂対策が不十分であったりするケースが少なくありません。大雨や強風などの自然災害により設備がダメージを受けると、劣化や破損が進んだり、二次災害を招いたりするリスクも高いです。

事故やトラブルを防ぎ、安全性を確保するためには、正しい設備の選定・設置が重要です。
また、ネジやボルトに緩みがないか、太陽光パネルに汚れや傷・変形がないかを定期的にチェックする必要があります。大きな自然災害が予期される場合も、最大限可能な限り適切な対策を講じましょう。

産業用太陽光発電所のメンテナンスと維持費

太陽光発電は主に、住宅用と産業用に分けられます。

産業用太陽光発電所は、出力容量が10kW以上の設備を指し、太陽光パネル・パワーコンディショナー・配線・架台・接続箱・分電盤などの機器で構成されます。産業用太陽光発電所の中でも出力容量が50kW以上の場合、さらに終電箱とキュービクルの設置および接続が必要です。

産業用太陽光発電所は住宅用に比べて規模が大きい分、詳細なメンテナンスが欠かせず、維持費も高くつく傾向があります。

以下で、産業用太陽光発電所に求められるメンテナンス内容と、その維持費について見ていきましょう。

定期点検

住宅用・産業用に関わらず、太陽光発電所は3〜4年に一度以上の定期点検を行う努力義務があります。定期点検では設備の不具合の有無や、長期運用にあたっての安全性などを、目視または測定機器などを用いて確認します。

日本太陽光発電検査技術協会による「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」では、定期点検の目安時期や目的、目視点検項目について言及しています。

発電開始1年後には設備の初期不良を発見・補修すること、それ以降は4年ごとを目処に、設備の劣化や破損を確認・補修することが点検の主な目的です。特に、発電開始9年後からは設備の保証期間をチェックし、消耗品の交換や設備更新の時期を検討することも推奨されます。

定期点検は1回あたり3万円程度の費用がかかるため、1年あたり7〜8,000円の維持費がかかることになります。ただし、施工会社によっては無料で定期点検を行ってくれる場合もあるため、維持費を抑えるためには施工会社の選定も重要です。

パワーコンディショナーの稼働

太陽光発電を構成する重要な設備の一つが、パワーコンディショナーです。

パワーコンディショナーとは、太陽光発電により生成した「直流電力」を、一般使用可能な「交流電力」に変換する機器のことです。発電量を最大化したり、売電や電力供給の際に電力会社との系統連系を保護したりなど、太陽光発電を運用する上で大きな役割を果たします。

安定的な発電のためには、パワーコンディショナーをしっかり管理し、問題なく稼働させることが欠かせません。

パワーコンディショナーの一般的な寿命は10〜15年長くて20年程度です。
大半のメーカーが10年保証をつけており、有償で15年以上に延長できるケースもあります。保証期間内であれば、修理や交換は無料で受けられます。保証期間外の故障であれば、修理に3万円前後、買い替えには20〜30万円前後の費用が必要でしょう。

また、パワーコンディショナーを稼働させるためには、出力容量50kWの設備で月2,000円ほどの電気代がかかります。

太陽光パネルの清掃・除草

太陽光発電の発電効率を保つためには、太陽光パネルの汚れ除去や清掃、周囲の草木や雑草の除去が欠かせません。

太陽光パネルの清掃や除草は年に2〜3回の実施が勧められています。
太陽光パネルの清掃代金は基本料金1万円に加えて、パネル1枚あたり約500〜1,000円が目安です。出力容量50kWの設備であれば、1回につき5万円程度かかると考えておきましょう。

また、除草作業代金は1m²あたり50〜150円前後が相場です。作業に用いる機器や薬剤、パネルの枚数や面積によって差はあるものの、1回につき20万円程度かかるでしょう。

保険

太陽光発電所に投資するにあたり、万一の場合に備えた保険の加入は重要です。
通常、太陽光発電設備に対するメーカー保証には、無償タイプと有償タイプがあります。

無償保証は、自然災害や事故が原因となる損害は保証対象外であるケースが多いです。
思わぬトラブルが発生する可能性はゼロではないため、保険の加入は慎重に判断する必要があります。

太陽光発電設備につけられる主な保険の種類として、火災・動産総合保険、賠償責任保険、休業補償保険、出力抑制保険が挙げられます。

火災・動産総合保険は、火災・落雷・水災・水漏・建物の倒壊・盗難・破損・車両の衝突など、自然災害や故障による損害をカバーします。保険料は出力容量48kWの設備で、火災保険が年に1〜2万円前後、動産総合保険が3〜4万円前後です。

賠償責任保険は、太陽光パネルが強風により人や民家に当たってしまうなど、他者に損害を与えた場合に適用されます。保険料の目安は初期費用の2.5〜3%前後で、出力容量48kWの設備で5,000円程と考えておきましょう。

休業補償保険は、自然災害や事故により発電が停止した際、復旧までの売電収入をカバーします。保険料は年間7,000円前後が目安です。

出力抑制保険とは、電力会社が電気の需給バランスを保つため、一定期間電気の買取を停止した際に、売電収入をカバーする保険です。保険料は10年間の一括払いで、1kWあたり9,000円程度が目安となります。
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産業用太陽光発電所はいつ誰がメンテナンスする?

では、産業用太陽光発電所は、どのタイミングで誰にメンテナンスを依頼するのでしょうか。以下で、メンテナンス契約の主なパターンを見ていきましょう。

紐付き

太陽光発電設備の販売・施工業者と売買契約時に、メンテナンス契約も一緒に結ぶパターンです。出力容量が50kW以上の場合、大半の業者が施工後のメンテナンス契約を必須としています。一般的に、費用は50kWあたり年間15万円前後が目安です。

製品に関する知識が深く安心できる上、新たなメンテナンス業者を探したり契約したりする手間が省けます。

任意

太陽光発電設備の販売・施工業者に依頼するか、他のメンテナンス業者に依頼するかを選べるパターンです。業者を探す手間を省きたい方や、販売・施工元に一貫して見てもらいたい方は、同じ業者に依頼できます。

反対に、様々なメンテナンス業者を見比べたい方や、自分である程度の維持管理を行いたい方は、無理に販売・施工元に依頼せずとも問題ありません。

請負不可

太陽光発電設備の販売・施工業者が、メンテナンス業務に対応していないパターンです。
メンテナンスを専門で行う業者に、別途依頼する必要があります。

業者探しや契約の時間がかかるものの、仲介業者に相談すれば比較的手間を省きやすいです。また、製品の販売・施工元とメンテナンス業者を分けることで、専門的な知識のある第三者の目線で対応してもらえます。

太陽光発電のメンテナンスでよくある疑問

最後に、太陽光発電のメンテナンスについて、よくある疑問を見ていきましょう。

太陽光発電のメンテナンスは義務なの?

結論から言うと、太陽光発電のメンテナンスは義務化されています。

2017年4月から施行された改正FIT法では、新たに太陽光発電のメンテナンスの努力義務が定められました。FIT制度(固定価格買取制度)適用の太陽光発電設備と、50kW以上の発電設備は「発電性能の維持に対する取組」として、電気事業法に基づいた保守点検(O&M)に努めなくてはなりません。

ただし、現時点ではあくまで努力義務であるため、メンテナンスを怠った際の罰則は設けられていません。しかし、FIT制度の認定を取り消される可能性があります。

太陽光発電のメンテナンスは自分でやっても問題ない?

太陽光発電のメンテナンスは、自分で行っても問題ありません。
発電量やエラーメッセージ、異常音や汚れの有無など、目視で確認できる日常点検は、専門知識のない方でも行いやすいでしょう。

しかし、電気系統を触るメンテナンス作業や太陽光パネルの洗浄などは、事故や故障のリスクもあるため、プロのメンテナンス業者に任せるのがおすすめです。

また、住宅用の太陽光発電は比較的自分でメンテナンスを行いやすい一方、産業用の大型システムや遠隔地の発電所は、作業の手間がかかるため専門業者に定期点検してもらうケースが多いです。

メンテナンスは太陽光パネルだけで十分?

太陽光発電のメンテナンスは、太陽光パネルの清掃や確認だけでは不十分です。
パワーコンディショナーやケーブル・分電盤・接続箱など、太陽光発電システムを構成する様々な部品を抜かりなく管理しなくてはなりません。

目視での日常点検が難しい範囲は、定期的に専門業者にメンテナンスを依頼しましょう。

故障していた場合、修繕費は全額負担?

太陽光発電設備の修繕費の負担は、当該期間の保険の有無によります。

一般的なメーカーの無償保証では、製造上の問題や適切な使用にも関わらず故障が発生した際、費用を支払うことなく補償を受けられます。

メーカーの無償保証期間は、10〜15年程度が通常です。
ただし、自然災害による故障や破損は、メーカーの無償保証の対象外であるケースが多いです。また、無償保証期間を過ぎていた場合も、修繕費は自己負担となります。

別途、有償の火災・動産総合保険に入ることで、万が一のリスクを軽減するのもおすすめです。

修繕なしで売却を検討するならエネうる

エネうるとは、太陽光発電システムを高価買取・売却するサービスです。
太陽光発電や不動産仲介に関する知識と経験を蓄えたスタッフによる万全なサポート体制が整っており、査定から現金化までスピーディな点も特長です。

買取エリアや容量などの条件がなく、傷や劣化がある太陽光パネルも買い取り対象であるため、修繕なしで売却できます。

面倒な手続きなしで、太陽光発電システムを早く売って現金化したい方、売却前の設備の劣化や不具合が心配な方におすすめのサービスです。
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太陽光発電所のメンテナンス費用の相場

株式会社三菱総合研究所の調査によれば、2020年1〜9月のデータを基にした太陽光発電所の運転維持費は、10kW 以上全体の平均値で1kWあたり年間0.54万円でした。

ただし、保険加入の有無や設備の使用年数・劣化状態などにより、メンテナンス費用は上下するため、あくまで目安として捉えておきましょう。

太陽光発電を長く安全に使うためには、こまめなメンテナンスが必須条件

いかがでしたでしょうか。

今回は太陽光発電にメンテナンスが欠かせない理由を確認し、メンテナンスの具体的な内容や費用・契約などについて解説しました。

環境に優しい再生可能エネルギーとして注目が集まる太陽光発電は、自家消費だけでなく売電による収入が期待できる有効な投資先です。導入の際は運用後のメンテナンスについても、入念に把握することが重要です。

無料相談も受け付けているので、詳しくはエネうる公式サイトを参照してください。

この記事を書いた人

エネうる 広報部

エネうるの広報担当です。太陽光発電所の基礎知識を更新していきます。これから太陽光発電所の購入や売却をお考えの方は、ぜひご参考にしてください。

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