エネうる通信【コラム】

2022年10月21日

太陽光発電設備の減価償却とは?耐用年数やメリット、注意点を把握

太陽光発電設備は中古取得も含め、減価償却の対象です。
減価償却は節税効果があるため、正しい知識と情報を得ることで、運用上の利益を増やせます。

そこで本記事では、太陽光発電の減価償却の基準や計算方法、メリット・デメリットや注意点などを解説します。
太陽光発電設備を運用している方、減価償却の内容や仕組みについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

太陽光発電設備の減価償却とは?耐用年数やメリット、注意点を把握

太陽光発電の減価償却とは

太陽光発電設備を運用して一定以上の売電収入を得ている場合、確定申告をしなくてはなりません。これは、太陽光発電設備が事業資産としてみなされるためです。
確定申告をする際は、資産の減価償却を計算する必要があります。

以下で、減価償却の基準と仕組み、減価償却に関わる法定耐用年数について見ていきましょう。

減価償却の基準について

減価償却の対象となる固定資産は事業用であり、使用可能期間が1年以上かつ取得費用が10万円以上のものです。

太陽光発電設備は、大きく住宅用と産業用に分けられます。
また、売電収入から経費を差し引いた所得が20万円を超える場合、確定申告の対象となります。住宅用の太陽光発電設備は出力が10kW未満であり発電量が限られ、主に自家消費に用いられるため所得が20万円を超えるケースは少ないです。
つまり、住宅兼事務所に太陽光パネルを設置する場合、住宅の新築時に屋根一体型の太陽光パネルを設置して住宅の資産価値に上乗せする場合などを除き、住宅用の太陽光設備が固定資産として扱われることは滅多にありません。
ただし、他の副収入と合わせて合計所得が20万円を超える際は、確定申告のために減価償却を行えます。

出力が10kW以上の事業用の太陽光発電設備が、減価償却の対象と考えれば良いでしょう。

減価償却について

通常、事業に必要な不動産や設備・自動車などの固定資産を購入すると、その年の経費として全額を計上します。ただし、時間の経過に応じて資産の価値が減少すると考えられる場合、単年ではなく使用可能期間(法定耐用年数)に分けて計上するという方法が「減価償却」です。
資産の取得費用が大きいと、一時的に会社の業績が悪くなる場合があります。
そこで、大きい支払額をあらかじめ耐用年数に分割して計算することで、毎年の業績を正しく把握するための仕組みです。

法定耐用年数について

法定耐用年数とは国税庁が定めた、設備や建物が固定資産として使える期間のことです。
減価償却費を正しく計算し、納税の公平性を保つために設けられています。
太陽光発電設備の法定耐用年数は17年です。
法定耐用年数はあくまで税務会計を行う際の基準であり、実際の設備の寿命とは異なる場合があります。一般的に、太陽光パネルの期待寿命は30年程度、パワーコンディショナーは10〜15年程度と言われています。

減価償却の計算方法

減価償却の計算方法は、大きく分けて定額法と定率法の2種類があります。
計算方法は一度選択すると、3年間変更ができません。また、複数の太陽光発電設備を所持する場合、設備ごとに計算方法を選ぶことも不可能です。

以下で、定額法と定率法の具体的な算出方法、特徴を見ていきましょう。

定額法は一定の金額を減価償却する

法定耐用年数の期間中、毎年一定の金額を減価償却費として計上する方法です。
減価償却費は「固定資産の取得費用÷法定耐用年数」または「取得費用×定額償却率」で求められます。なお、定額償却率は「1÷耐用年数」で計算されるため、太陽光発電設備の場合は1÷17≒0.059となります。
どちらの方法で計上しても、減価償却費に大きな差異は生まれません。

例えば、1700万円の太陽光発電設備を取得した際、
減価償却費は1700万円÷17=100万円
または1700万円×0.059=100.3≒100万円となります。

定額法は計算が簡単で分かりやすく、資金計画が立てやすいです。また、定率法と比べると初年度の減価償却費が少ない一方、節税効果をやや感じにくいです。
太陽光発電設備を取得した年度に利益が少ない場合や、利益分を少しでも多く計上したい場合に向いています。

定率法は一定の割合で減価償却を行う

法定耐用年数の期間中、毎年一定割合の金額を減価償却費として計上する方法です。
初年度の減価償却費は「固定資産の取得費用×定率償却率」、次年度以降は「(取得費用−前年度までの減価償却費の合計)×定率償却率」で求めます。なお、法定耐用年数17年の固定資産の定率償却率は、0.118です。

例えば、1700万円の太陽光発電設備を取得した際、初年度の減価償却費は1700万円×0.118≒200万円となります。次年度以降は2年目が(1700万円−200万円)×0.118≒177万円、3年目が156万円と徐々に減少していきます。

また、定率法は一定の時間が経過すると、途中から定額法に切り替わります。これは、後半に減価償却費が数円単位となった時、残りの期間で分割する必要があるためです。
定額法に切り替わるタイミングは、「償却保証費」に差し掛かった時です。償却保証費は取得費用×保証率で求められます。法定耐用年数17年の場合、保証率は4.038%です。

つまり、1700万円の太陽光発電設備を取得した際、
1700万円×0.04038=68万6460円が償却保証費となり、10年目からは毎年68万6460円が減価償却費となります。

計算方法がやや複雑な定率法は、定額法に比べて初年度の減価償却費が多く、節税効果を得やすい一方、計上時に利益分が少なくなります。
太陽光発電設備を取得した年度に利益が多い場合は、節税メリットが大きい定率法がおすすめです。また、法人の場合は定率法を採用するのが一般的です。

中古や稼働済みの太陽光発電設備も減価償却対象

中古や既に稼働している太陽光発電設備を導入した場合も、減価償却の対象です。
ただし、取得費用や耐用年数の経過状況によって、減価償却費の計算方法が異なります。
以下で、3つのケースに分けて見ていきましょう。

中古太陽光発電設備の取得費用が、新品時の取得価額の50%以上あるケース

中古の太陽光発電設備の取得費用が、新品時の取得価額の50%以上である場合は、太陽光発電設備の本来の法定耐用年数である17年が適用されます。
また、この取得費用には中古設備を修繕・メンテナンスするために要した資本的支出も含まれます。
例えば、新品時の取得価額が2000万円の設備を、1200万円で取得または修繕した場合、減価償却費は法定耐用年数17年を基準に算出されます。

取得費用が新品時の取得価額の50%以下で、耐用年数の一部のみを経過したケース

中古の太陽光発電設備の取得費用が、新品時の取得価額の50%以下である場合は、取得後の使用可能期間が耐用年数として適用されます。
中でも耐用年数の一部のみ経過している場合は、
「(法定耐⽤年数−経過年数)+経過年数×0.2」で耐用年数を求めます。
例えば、10年経過した中古の太陽光発電設備の耐用年数は、(17−10)+(10×0.2)=9年です。

取得費用が新品時の取得価額の50%以下で、耐用年数を全て経過したケース

中古の太陽光発電設備の取得費用が、新品時の取得価額の50%以下であり、耐用年数を全て経過している場合は、法定耐用年数の20%が耐用年数として適用されます。
つまり、17年以上経過した中古の太陽光発電設備の耐用年数は、17×0.2=3年(小数点以下は切り捨て)です。

また、太陽光発電設備の前のオーナーが減価償却を既に完了していても、所有者が切り替われば再び減価償却が可能です。その際は、取得年度から減価償却を始める必要があります。
なお、中古の固定資産の耐用年数の算出は、取得事業年度に行わなければなりません。
当該年度に行わなかった場合、それ以降に耐用年数を算出できないため気をつけましょう。

太陽光発電の減価償却のメリット

太陽光発電設備を減価償却することで、様々なメリットを得られます。

法人税や所得税の節税効果が期待できる

固定資産である太陽光発電設備は減価償却の対象であり、法定耐用年数17年の間、長期的に減価償却費を経費として計上できます
太陽光発電事業により得た利益から経費を差し引き、課税所得を抑えることで、法人税や所得税の節税効果を得られます。
また、設備の購入費用だけでなく、運用に伴う点検・修理などのメンテナンス(O&M)の費用も経費として計上可能です。

正しい損益が把握できる

太陽光発電設備の取得費用は膨大な出費となるため、一度に計上すると赤字になってしまう可能性もあります。特に、融資を受けている場合、赤字によって財政悪化とみなされ、融資継続に不利に働く恐れも考えられます。また、固定資産の投資が収益にどのような影響・効果を与えたのかも適切に判断できません。

減価償却によって取得費用を分割計上することで、毎年の経費を算出し、正確な損益を把握できます。事前に複数年度分の減価償却費が分かっているため、事業計画の確認や修正などにも役立つでしょう。
また、太陽光発電設備を取得した年の財務負担を減らせます。次年度からは実際の支出なしに経費計上のみできるため、業績が安定しやすいです。

太陽光発電にかかる税額控除・即時償却

法人が自家消費型の太陽光発電設備を導入した場合、「中小企業経営強化税制」の対象として税制控除を受けられる可能性があります
「中小企業経営強化税制」とは、資金力が限られる中小企業や個人の生産性向上を支援するために、最大10%の税額控除または即時償却を認める制度です。

資本金が3000万円以下の法人又は個人事業主が10%、資本金3000万円以上1億円以下の法人の場合は7%の税額控除が認められます。ただし、税額控除額は当該事業年度の法人税額の20%相当額を超えられません。
また、即時償却は初年度に取得費用の全てを経費として計上可能です。
支払う税金の総額を抑えたい場合は税額控除が、取得年度の利益が多く、課税所得を抑えたい場合は即時償却がおすすめです。

なお、当制度の対象は自家消費率50%以上の発電所のみであり、全量売電型や投資目的の発電所には適用されません。また、投資目的の発電事業者を含む電気業・水道業・鉄道業・航空運輸業・銀行業・映画業を除く娯楽業は対象外です。

太陽光発電の減価償却のデメリット

太陽光発電設備やその他の固定資産を同年度に大量に取得した場合、減価償却のためにそれぞれの法定耐用年数を正確に確認しなければなりません。会計処理にやや手間がかかるケースがあります。

また、減価償却に関わる税制法は頻繁に改定されます。
例えば、2015年の税制改定では一部の固定資産の定率法が廃止され、定額法に一本化されました。今後も、太陽光発電設備に関わる計算方法や、法定耐用年数が改定される可能性もあります。税制法の改定に伴い会計処理を見直し、アップグレードしなくてはなりません。

➤関連記事:太陽光発電のメリット・デメリットとは?仕組みや特徴もチェック

太陽光発電の減価償却の注意点

太陽光発電設備の減価償却を行う際は、次の点に留意しましょう。

耐用年数を正しくに把握する

固定資産には、あらかじめ法定耐用年数が設定されています。
減価償却の際は法定耐用年数を元に、分割して少しずつ経費計上するため、年数を正しく分かっていないと手違いが起きてしまいます。
太陽光発電設備の法定耐用年数は17年です。実際の期待寿命が機器によって10〜30年と幅広いため、注意して覚えておきましょう。
また、国税庁が発表している「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表において、種類ごとの法定耐用年数と、定額法と定率法のそれぞれの償却率も併せて確認できます。

償却方法は3年間変更できない

減価償却の計算方法は定額法と定率法の2種類があります。
取得した太陽光発電設備の耐用年数や、取得年度の事業の収益などを考慮し、状況に併せて最善の計算方法を選ぶことがポイントです。

また、計算方法はどちらの場合でも、一度選ぶと3年間変更できません。
3年経過後に計算方法を変更する際は、管轄の税務署で変更手続きを行う必要があります。手続きは変更予定の事業年度開始日の前日までに完了させなければなりません。
事前に情報を集め、必要書類は余裕を持って用意しておきましょう。

除却処理を必ず行う

太陽光発電設備を何かしらの理由で処分した場合、「除却処理」を必ず行いましょう。
除却処理とは事業で使用しなくなった固定資産の簿価(残高)を、帳簿から除く会計上の処理のことです。

耐用年数が過ぎ減価償却が終わった固定資産は、使用する限り「残存価額」と呼ばれる価値が残り、償却資産税(固定資産税)も発生し続けます。
太陽光発電設備を物理的に廃棄しても、除却処理を怠ると税金を支払わなくてはなりません。節税対策のためにも、除却処理を忘れないように注意しましょう。

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減価償却を利用して太陽光発電事業を上手に運用

いかがでしたでしょうか。
今回は太陽光発電設備の減価償却について、対象の基準や計算方法、メリット・デメリット、注意点などを解説しました。
太陽光発電設備は価値の高い固定資産であるため、税務上の減価償却費の影響が大きいです。減価償却を行うことで、節税効果が期待でき、正しい損益を把握できるようになります。
適切な知識を身につけて、太陽光発電事業を上手に運用していきましょう。

この記事を書いた人

エネうる 広報部

エネうるの広報担当です。太陽光発電所の基礎知識を更新していきます。これから太陽光発電所の購入や売却をお考えの方は、ぜひご参考にしてください。

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