太陽光発電投資は儲からない?メリットやリスク、注意点を解説
「太陽光発電投資は儲からない?」このような疑問をお持ちの方は多いでしょう。太陽光発電投資は儲かると思って参入したのに、納得のいく成果が得られないケースが増えています。
本記事では、太陽光発電投資のメリットや注意点を解説しています。気を付けておくべきポイントを事前にチェックしておけば、太陽光発電投資の失敗を回避できる可能性があるでしょう。
太陽光発電投資への参入・撤退を検討している人に有益な情報をまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
太陽光発電投資は儲からない?メリットやリスク、注意点を解説
太陽光発電投資とは
太陽光発電投資とは、太陽光パネルで作った電気を買取りしてもらうことで収益を得るビジネスモデルです。
太陽光発電投資にとって重要な制度のことを「固定価格買取制度(FIT)」と呼びます。※FITは、Feed-in-tariff(フィードインタリフ)の頭文字。
2012年から施行されているこの制度では、『太陽光発電の設備を作ったら一定期間は買取価格を保障する』と定められています。従来は「設備を作っても売り先が確保できないかもしれない…」といった不安を抱えながら、設備投資を行っていました。
しかしこの制度が整えられたことで、新規参入者が増えて太陽光発電事業が活発化したのです。
➤関連記事:太陽光発電の権利売買とは?仕組みや注意点を解説
太陽光発電投資の基本
太陽光発電投資の基本フローは以下のとおりです。
・電力会社に電気を売り資金を確保する
・太陽光発電投資の初期費用
・太陽光発電のランニングコスト
・太陽光発電投資の利回り
それぞれを詳しく解説します。
電力会社に電気を売り資金を確保する
太陽光発電投資で収益を出すためには、電気を作って、それを買い取ってもらうことが必要です。固定価格買取制度(FIT)が適用されている事業用の発電設備であれば、20年間の売電価格が保証されているので、長期的な収支計画を立てやすい傾向にあります。
生活インフラである電気の需要が無くなることはあり得ないので、安定した収益を得られるビジネスモデルのひとつだと言われています。ただし太陽光発電の設備にはさまざまなメンテナンスが必要なので、確保した資金の一部は設備の維持に使用されるケースが多いでしょう。
太陽光発電投資の初期費用
産業用の太陽光発電量は10kW以上が条件となっており、この規模の設備を整えるためは1,000万円以上の予算が必要なケースが多いです。
一般住宅用の太陽光発電設備の場合は、新築時で約43.1万円/1kWh、既存住宅への追加工事は約47.9万円/kWhが目安となっています。
具体的に必要な初期設備は以下のとおりです。
・太陽光パネル
・架台
・柵
・パワーコンディショナー
産業用太陽光発電の場合は設置するための専用の土地が必要なので、その代金も用意しなくてはなりません。その他に工事費用や契約にかかる諸経費も発生します。
土地代は地域によって相場が異なりますし、工事代金も施工業者によって価格差があります。またパネルのグレード(新品または中古)などによっても、初期費用は大きく変わってくるでしょう。
太陽光発電のランニングコスト
太陽光発電所を運営するためには、以下のコストが発生します。
必要なコスト | 内容 | 目安金額 |
電気代 | ・パワーコンディショナーの稼働に使う電気代
(パワーコンディショナーとは、発電によって生まれた電気を直流から交流に変換する装置) |
10,000~30,000円/年間 |
保険代 | ・火災や落雷などの故障に備えるための民間の保険
(自然災害には適用されないケースもある) |
初期費用の0.3〜3% |
修理点検代 | ・草木やゴミの撤去、パネル表面の破損や汚れのチェックなどを行う | 50,000円前後/年間 |
監視システム
利用料 |
・太陽光発電の量をスマホでチェックできるサービス | 10,000~30,000円前後/年間 |
管理費(人件費) | ・50kW以上の場合は『電気主任技術者』の選任が必要
・安全確保のため有資格者を配置しておかなければならない |
年間売電総額の2~5%程度 |
税金 | ・法人税/所得税/固定資産税などがかかる | 収益によって異なる |
この他にも、土地のローン返済や日々の管理にかかる人件費などがさらに上乗せされます。規模が大きくなればより多くの電気を生み出せますが、管理面では大変になってくることもあるでしょう。
太陽光発電投資の利回り
太陽光発電投資の表面利回りは10%前後が平均です。不動産投資の表面利回りが4〜6%と言われているので、これに比べると高い数値です。
太陽光発電投資は不動産投資に比べてキャッシュフローが良いのが特徴です。不動産投資の場合は、入居・撤去が繰り返される可能性があり、それによってキャッシュフローが崩れる心配があります。
太陽光発電投資では、年間を通して安定した収益を出せる可能性が高いため、コンスタントにキャッシュが手元に入ってきます。年間の日射量によって多少の前後はあるものの、大幅な乖離が生まれるケースは少ないです。
太陽光発電投資が儲からない理由
国からの助成制度や利回りの良さで人気の太陽光発電投資ですが、「あまり儲からない」と言われることがあります。太陽光発電投資におけるデメリットには以下の理由があります。
・売電価格が下落している
・FIT制度からFIP制度に移行するため
・出力抑制で売電できない
・天候によって発電量が変動する
・太陽光発電設備の盗難
・自然災害による被害
それぞれを詳しく見ていきましょう。
売電価格が下落している
経済産業省管轄の環境エネルギー庁が発表している、近年の売電価格の推移は以下のとおりです。
2021年~2023年の、1kWhあたりの調達価格
設備の大きさ | 10kWh未満の設備 | 10kWh以上
~50kWh未満の設備 |
50kWh以上の設備 |
2021年 | 19円 | 12円 | 11円 |
2022年 | 17円 | 11円 | 10円 |
2023年 | 16円 | 10円 | 9.5円 |
※参照元:資源エネルギー庁
さかのぼって2012年の価格表を見ると、10kWh以上の調達価格が40円(税抜)となっており、この10年間で50%以上価格が下落していることがわかります。
今後も下落する可能性があるので、太陽光発電投資は儲からないと、心配に感じている人もいるでしょう。
FIT制度からFIP制度に移行するため
FIP制度とは「Feed-in Premium(フィードインプレミアム)」の略で2020年から施行された制度です。FIP制度は、従来のFIT制度で発生していた課題を洗い直し、あらたに内容が定められたものです。新旧の制度には、以下のような違いがあります。
売電価格 | バランシングコスト | メリット | |
FIT制度
(旧制度) |
・一定期間の買取を保証していた
・売電の時間帯に関わらず同一価格 |
・特例によって免除されていた | ・売電価格はずっと固定だが、安定的な収益モデルだった |
FIP制度
(新制度) |
・売電価格が変動する(市場価格との連動) | ・発電計画の報告が必要
・計画と実績に差が出た場合に差を埋める費用を支払う |
・高い収益が狙いやすい(売り先や売り方を工夫できるようになる) |
FIT制度が施行された当時は再生可能エネルギーの普及を一番に考えて、参入しやすい制度が作られていました。10年以上の月日がたち、取り巻くさまざまな環境の変化によって現代にあう新しい制度へと変化しています。
以前に比べると免除制度がなくなったり、収益の安定性が保てなくなったりしたため今後を不安に思う業者もいるようです。
出力抑制で売電できない
『出力抑制』とは、「電気が市場に余っているから買い取れません」と、電力会社が判断して、買取を一時的にストップすることを指します。
電気を安定的に供給するためには、『需要と供給のバランスを保つこと』が重要です。電気が市場に多く出すぎてしまうと変電所に負担がかかり、ひどい場合は停電に繋がってしまうことがあります。
電力会社では、こうした事態にならないように電力をコントロールしているのです。電力会社が定めているルールは以下のとおりです。
・年間360時間を上限 に出力抑制できる
・無制限(条件により)で出力抑制できる
これらのルールに則って、電力会社はいつでも出⼒抑制を要請できます。つまり提供側は、いつ制御されるか分からない状態で稼働しなくてはならないのです。
天候によって発電量が変動する
太陽光発電にとっての大きなリスクは、天候によって発電量が左右されることです。気温が高い日は大量の電気が作られると思われがちですが、実は高温すぎる環境は発電には不向きです。
外気温が25℃を超えた場合は発電効率が下がると言われており、温暖化が進む昨今はちょうどよい温度の時期が減ってきています。
自然環境はコントロールが不可能なため、先行きが読めないと感じて太陽光発電投資を躊躇う人もいるでしょう。
太陽光発電設備の盗難
太陽光発電の設備が盗難にあうケースは後をたちません。太陽光発電の装置は非常に高価なものが多いのですが、屋外に設置してある以上完全に浸入を防ぐのは難しいです。
太陽光パネルだけでなく、銅線ケーブルが盗難に遭う事例も発生しています。1,000万円以上の被害が出たケースもあり、深刻な問題となっています。
防犯対策としては、録画できるカメラをつけたり、ときには監視スタッフを配置したりする必要もあるかもしれません。こうしたコストについても考えておく必要があります。
自然災害による被害
地震や台風によって、太陽光パネルが破損してしまうケースがあることも把握しておかなければなりません。実害として設備が破損してしまう他に、二次災害として売電ができなくなった事例も報告されています。
具体的には、2018年に北海道で地震が起こった際に、売電の受け入れがストップされました。地震によって火力発電所が使用できなくなったことで電力の需要が一気に増えてしまい、送電網が使用できなくなってしまったのです。太陽光発電投資を行う際は、こうした自然災害によるリスクはつきものです。
いまから太陽光発電投資を開始するメリット
「太陽光発電は儲からない」という声を聞くこともありますが、今から新規参入する人でも勝ち目はあります。太陽光発電投資のおすすめポイントを以下にまとめました。
・太陽光発電投資の専門的な知識がいらない
・利回りの安定性
・節税対策として有効
・融資が受けられる
・不動産投資と比べて簡単
・太陽光発電は個人・法人どちらもおすすめ
それぞれを詳しく解説します。
太陽光発電投資の専門的な知識がいらない
太陽光発電投資は、他の投資に比べて専門的な知識が比較的少ないです。例えば、不動産投資であれば、土地や建物の良し悪しを見極める力、株式投資であれば経済に関する深い知識が必要でしょう。
太陽光発電投資は設置場所と設備を整えれば、あとは自動的に電力を作ってくれます。太陽光パネルや周辺設備もそこまで複雑なものではないので、製品の選び方も難しくありません。
日々のメンテナンスや災害リスクに関する対策は必要ですが、これらも管理会社等に任せられます。初期投資のキャッシュがあれば、参入しやすい投資と言えます。
利回りの安定性
太陽光発電投資の利回りは約10%です。国の制度によって最低ラインの売価が定められているので、価格競争を起こす可能性は低いです。
また社会情勢によって価格が大きく左右されることも少ないので、安定的な収益が継続できます。
節税対策として有効
太陽光発電投資のメリットのひとつには、節税効果の高さがあります。太陽光発電投資に参入する際には、初期投資としてまとまった費用がかかります。これらの費用は以下の2種類の方法のどちらかで「減価償却」が可能です。
定率法 | 初年:取得価格×0.118
次年度以降:前年の償却分を除いた残存価格を算出し「残存価格×0.118」を計上 |
定額法 | 毎年同額:取得価格×0.059(1/17)を計上 |
原則として、法人は定率法、個人事業主は定額法を用います。異なる方法を希望する場合は、税務署に届け出をすれば変更可能です。初期費用は1,000万円以上になることもありますから、毎年かなりの額を経費として計上できることになるでしょう。
融資が受けられる
太陽光発電投資を始める際の初期投資の費用は、融資を申請することが可能です。
融資を受け入れてくれる可能性があるのは以下の企業です。
・日本政策金融公庫
・銀行
・信販会社
特に日本政策金融公庫の融資は会社員でも申請可能で、比較的審査がとおりやすいと言われています。日本政策金融公庫には、以下のようなプランが用意されています。
ご利用いただける方 | 非化石エネルギーを導入するために必要な設備を設置する方 |
資金のお使いみち | 非化石エネルギーを導入する施設などを取得するために必要な設備資金 |
融資限度額 | 7,200万円 |
ご返済期間 | 20年以内<うち据置期間2年以内> |
対象設備 | 特別利率Aの対象設備
・発電設備(太陽光(発電出力 10kW 以上の自家消費型発電設備)に限ります。) ※その他もあり |
参照元:日本政策金融公庫
個人事業主でもきちんとした収益プランがあれば太陽光発電投資にチャレンジすることが可能です。詳しい要項については、各機関に問い合わせをしてみてください。
不動産投資と比べて簡単
太陽光発電投資が人気を集めている理由は不動産投資に比べて参入しやすいからです。不動産投資はライバルが非常に多く、いわゆるレッドオーシャンの市場です。そのため、資金力のない中小法人や個人が投資家と同じフィールドで戦うのは容易ではないでしょう。
また、不動産投資は長期投資と言われているので、すぐに多くの収益があがらないケースもあります。ローンを抱えながら投資する場合は、数十年単位での収益判断が必要なので、時間的・金銭的に余裕がないと難しいかもしれません。
太陽光発電投資の場合も初期費用のローンが発生する可能性があるものの、売電した利益は毎月入ってきます。先の見えにくい不動産投資に比べて、コンスタントに売り上げのある太陽光発電投資は、気持ち的にも安定した状態で運営ができるでしょう。
太陽光発電は個人・法人どちらもおすすめ
太陽光発電投資は、まだまだ儲かる可能性があります。法人で大きく展開している企業も、個人がミニマムで始めているケースでも、多くの成功例があります。
制度の改変や自然災害によるデメリットはあるものの、10年前に比べて設置費用は格段に安くなりました。またスマホやパソコンを使っての管理を導入することで、人件費も削減できます。今後もさらに参入しやすくなる可能性があるので、興味のある方は少しでも早く着手したほうがよいでしょう。
➤関連記事:太陽光発電のメリット・デメリットとは?仕組みや特徴もチェック
太陽光発電投資で失敗しないための注意点
太陽光発電投資で失敗しないためには、以下のポイントをチェックしておいてください。
・シミュレーションは実質利回りを使用する
・中古物件の選び方
・物件の環境を確認
・メンテナンス費用は惜しまない
・FIT終了後の売電先を厳選する
・セカンダリーへ投資
・太陽光発電ファンドに投資
それぞれを詳しく解説します。
シミュレーションは実質利回りを使用する
太陽光発電投資を始める際は、「実質利回り」を確認しておくことが肝心です。表面利回りが良くても、正確な収益とは異なるケースも多くあります。
初期費用や毎月のコスト、ローンの金利なども含めて検討しておくことが重要です。シミュレーションする際は、実質利回りの数値でチェックしましょう。
中古物件の選び方
「太陽光発電投資に利用できる」として販売されている中古物件のなかには、実は設備がまったく整っていないものもあります。いくら価格の安い中古物件でも、取得後のメンテナンスに費用がかかると、結果としてコストがかかりすぎてしまうことがあります。
中古物件を検討する際には、既存の設備がどの程度あるのか?すぐに稼働できるのか?などを細かく見ておきましょう。
物件の環境を確認
太陽光発電投資のために物件を取得する場合は、周辺環境も忘れずに確認しておいてください。太陽光発電に欠かせない日射条件や、周辺の治安などのチェックは欠かせません。
普段は管理システムに任せたり、外注で管理を依頼したりできますが、やはり自分が足を運べる距離内が望ましいでしょう。緊急のトラブルや災害時には現地に行く可能性も高いので、遠い土地だと不便に感じる可能性があります。
メンテナンス費用は惜しまない
太陽光発電の設備は、毎日安定して電気を供給してくれる大事な設備です。長持ちさせるためにも、定期的なメンテナンスはかならず行いましょう。
具体的には、ゴミや落ち葉がパネルにたまらないように掃除したり、ひび割れなどを点検したりしておくことが有効です。メンテナンス費用はかさみますが、壊れてからでは遅いので、早めの対策が必要です。
➤関連記事:太陽光発電のメンテナンスは欠かせない!必要な費用の目安
FIT終了後の売電先を厳選する
FITの契約期間が終了する人は、売電先を自分で選ぶ必要があります。東京電力や関西電力などの『旧一般電気事業者』以外の企業に、電気を売れるようになります。
買取業者はそれぞれ独自のサービスを展開しているので、特徴を比べて、自分にあう企業を選びましょう。
セカンダリーへ投資
太陽光発電投資に興味はあるけれど、自分で設置から携わるのは面倒という方は、セカンダリーでの投資が最適です。
セカンダリー投資の特徴は、ハイリターンを得られる可能性がある点と、少額からはじめられることです。IPO株に高値がついた場合、購入時の2~3倍になるケースもあります。
太陽光発電ファンドに投資
ローコストで太陽光発電投資に参入したい人には、太陽光発電ファンドがおすすめです。出資者が複数いるファンドであれば、多額の初期費用を自分ひとりで用意する必要はありません。
投資がはじめての人でも、ファンドならガイドラインが整っているので安心して利用できるでしょう。
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太陽光発電投資が儲からないと感じたらすぐに売却しよう
太陽光発電投資には儲かる可能性のあるメリットの部分と、リスクとなり得るデメリットの双方があります。「投資」の性質上、儲かるか、儲からないかの未来は誰にも断言できません。
今後、国内や世界的な自然環境や社会情勢の変化は、幾度となく訪れることでしょう。さまざまな外的要因があっても、「太陽光発電投資を続けたい」と強い意思を持てる人は、投資に向いています。
もし「もう儲からないかも…」と弱気な気持ちになるのであれば、早めの売却がおすすめです。正解の分からない投資だからこそ、自分の直感は大切です。これ以上続けるのが難しいと少しでも感じたら、早めに手続きをはじめましょう。
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